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受けていた生物のゼミが終わって、陸はちょっと考え事をしながら机の上を片付けていた。
「あ、あの、陸くん」
呼ばれて後ろを振り返ると、同じゼミを取っている同級生が立っている。
「ちょっといいかな」
「ああ、なに?」
「えっと、ここじゃあ・・・」
彼女は目を伏せて握った右手を口元に当てた。
その仕草で陸は用事に見当がついた。
「俺、今から部室行くけど、歩きながらでもいいか?」
「うんっ」
人が行き交う校舎から出ると、寒空の中を歩き回る人間は少ない。
もう冬休みに入っている者もいるんだろう。
建物の陰を過ぎ、グラウンドが見える場所で彼女は立ち止まった。
「あ、あのね。明日、クリスマスだよね」
「ああ」
やっぱり、そういう事か。
「あの、もしよかったら・・・ううん、えっとあの、私とクリスマスを過ごしてくれませんか」
言い切った彼女はまっすぐ陸を見ている。
陸は申し訳なくて、一度視線をグラウンドに移した。
もう、走っている人がいる。
あの人、アメフトが趣味で人生だからな。
俺もだけど。
「申し訳ないけど、明日は俺、部の予定がある」
「えっ、じゃあ」
「それと、ごめん。俺、今は誰とも付き合う気がないんだ」
陸は彼女の言葉を遮って続きを言った。
彼女はそこまで言っていたわけではないけれど、察している以上知らん顔をするのは陸の同義に反する。
彼女は驚いた顔で一瞬固まって、それからうつむいた。
陸は彼女が顔を上げるのを待つ。
待っている間は時間が流れるのが遅いな、と思っていると彼女がゆっくり顔を上げた。
「明日って、試合?」
思ってもいなかった台詞に陸は少し戸惑ったが、すぐに返事を返す。
「俺たちの、じゃなくて、観戦だけど」
「私も観に行きたい。どこであるの?」
「・・・一緒には見られないぜ」
「うん。いいの。アメフトのこともっと知りたいだけ」
彼女は笑って言った。すこしだけ目元が潤んでいる。
陸は会場と開始時間を教えた。
ついでに自分たちの集合時間と集合場所、その後の予定まで話したのは、彼女が少しかわいいな、と思ったからだ。
「今は誰とも付き合わない」という陸の台詞を精一杯良い方に解釈して努力しようとしている彼女が。
「ありがとう」
と言って彼女は踵を返した。
陸は泣かれたりしなくて良かったとホッとしながら背中を見送った。
まさか、そんなやりとりがその後3回もあるとは思わなかったけれど。