忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Ah. amusement park

「31日は雲水くんの誕生日会するからねー」
1週間前、セナたち1年生が片付けをしていると、帰り支度を終えた栗田にそう声をかけられた。
泥門組はなにかにつけてパーティーをすることに慣れているけれど、『あの』金剛雲水に『誕生会』を開くというのはセナにとって衝撃で、思わずフリーズしてしまう。
入学して2ヶ月近く。
以前に比べれば親しみやすい人だとわかっているが。
「何か用意するものはありますか?」
非常に冷静に聞いたのは陸だった。
「ううん、雲水くんのリクエスト聞いて準備はできてるよ」
「全員集まれよ、スマートに」
コータローがそう言いながら陸に封筒を手渡した。
先輩二人は用は済んだと帰って行く。
彼らを見送ってから、1年生は陸を取り囲んだ。
陸は受け取った封筒の中身を取り出す。
「・・・遊園地?」



5月31日。
集合時間は最終のコマを受けてからでも間に合う5時。
セナたちアメフト部1年生はそろって指定された遊園地にやってきた。
「本当にここでパーティーなのかな」
「やっぱ、金はあとで徴収だよなぁ」
セナとモン太は困り顔を見合わせる。
ヒルマがいれば金の心配などいらないのだが・・・。
「それにしても本当に雲水さんがここでやりたいって言ったのか?」
陸は遊園地の可愛らしい看板を見上げて首を傾げた。
「行けばわかるっしょ。陸、券、券」
水町は単純に遊園地で遊びたいらしい。
集合場所は入場ゲートの先だったので、陸が全員分のチケットをモギリの女性に渡す。
一人ずつが持っていると絶対なくす人間が出るからと、今日まで部室の陸のロッカーに入れっぱなしにしていたのだ。
「私がいっちばーんっ」
ローラースケートで鈴音が滑り込むのにセナたちも続く。
先輩たちの姿を探してセナは周囲を見回した。
「ケケケ、ようやく来たか」
「ヒルマさんっ」
声の方を振り返ると、相変わらず機関銃を肩から提げたヒルマが立っていた。
「ちょうどいい時間だ」
「これで全員そろったね-」
「スマートだぜっ」
ヒルマのやや後方に雲水、栗田、コータローが立っていて、さらにその陰に阿含もいる。
「ああああ、あのー、これは・・・??」
セナは恐る恐るヒルマをうかがう。
「ケケケ、糞坊主が賭けに勝ちやがったからな。望みを聞いてやるんだよ」
「えっ」
ヒルマに賭で勝つ人間がいるのか!?
そして、本当に雲水が遊園地に来たがっていたのか!
「賭をしていたつもりはないんだがな」
雲水はそう言いながら「もらえるものはもらう」と笑った。
「なーんでアゴンヌもいるわけぇ?」
水町の危機感のなさは尊敬に値する。
阿含のきつい睨みも怖くないらしい。
「すまんな、俺が誕生日と言うことはコイツも誕生日なんだ。一緒に祝ってやってくれ」
「そそそそそそんな、滅相もないっっ」
雲水に頭を下げられて、セナはなんだか訳のわからない返事をしてしまった。
「ヒルマのおごりのフリーパスで23時まで遊べるんだよ~」
栗田が全員に首から提げるパスポートを渡す。
「基本的には自由行動だが、7時に一度集まってメシを食べよう。集合場所はここだ。質問がなければ解散っ」
「ハイッ」
雲水の号令に1年生たちは思わず背をタダして大きな返事をしてしまう。
周囲の視線が集まって少し恥ずかしい。
「どこから行こうか」
セナが言うと、鈴音と水町が園の地図を広げてあちらこちらと指さし始める。
「私、ジェットコースター乗りたい!」
「俺はね、俺はね」
あまりの大騒ぎにモン太が割って入った。
「待て待て、そんないっぺんにあちこち行けないだろ。順番決めようぜ」
「と言ってもどう回ればいいんだ?」
陸も地図をのぞき込んだ。
セナは先輩たちはどうするのかと顔を向けてみると、雲水が阿含に
「まだか」
と言っている。
阿含が遊園地の地図を広げて
「ウルセー、黙ってろ」
と返事をしているので、セナはそそっと雲水の近くに移動した。
背後に立ったセナに気がついた雲水が振り返ったので、思い切って聞いてみる。
「どれから乗りますか?」
「今、阿含が最短距離最短時間で全乗り物を制覇するルートを割り出している。それに沿って動くんだ」
雲水が楽しそうに笑っているので、セナも引きつりながら笑い返した。
か、神の能力の無駄遣い・・・。
とは思っても口に出せない。
「んじゃあさー、俺らもそれについて行けばいいんじゃね?」
「そうだな、それが確実だ」
雲水の台詞を聞いていた水町と陸が頷いている。
たしかにせっかく来たのだから、全部の乗り物に乗れる方がいい。
「おし、行くぜ、雲水」
「よし、道を逸れるなよ阿含」
地図を素早くたたんだ阿含と雲水が走り出してしまったので、1年生たちで慌てて後を追った。



3つめの乗り物が終わったところで、次の乗り物に向かって駆けだしていく雲水と阿含をなんとなく他の人間は見送ってしまった。
「・・・ハァ」
誰ともなく疲れ切ったため息をはく。
「もう、別行動にしよう」
陸の言葉に頷く。
乗り物に乗っては阿含が雲水の肩を抱き、唇の触れそうな距離で会話をする。
肩に届かなければ手をつなぎ、雲水が阿含の髪をかき上げる。
完全に二人はデートモードだ。
自分たちはお邪魔虫にもなれない、本人たちの意識の外でついて回る金魚のフン。
全乗り物制覇、というからにはメリーゴーランドやコーヒーカップにものるに違いない。
そんな金剛兄弟は見たくない。
「栗田たちどこだよーぉ」
水町が吠えると、モン太がやっぱり疲れた顔で答えた。
「コータロー先輩とヒルマ先輩はわかんねぇけど、栗田先輩はあそこだろ」
モン太の指さした方を見て、セナもその通り、と頷く。
後で食事を取る予定のフードコート。
きっと解散直後からそこを占拠しているだろう。
「それでいいよ。なにか飲も」
鈴音がローラーの方向を定めた。
セナは金剛兄弟が消えていった方向を見る。
まあ、二人の誕生日だもんな。
お裾分けをしてもらったことをありがたく思って、二人の邪魔をしないことをプレゼントにしよう。
「セーナーっ」
駆けだしていた鈴音に呼ばれる。
「今行くよーっ」

拍手

PR

Copyright © PLV作品展示室 : All rights reserved

「PLV作品展示室」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]